舞台美術のデザイン画を「道具帳」と呼んでいます。

日本舞踊の場合、実際の舞台の大きさは、間口6~8間(約11m~14.5m)×タッパ12~15尺(約3.6m~4.5m)程度が一般的。道具帳はそれを1/30、1/40、1/50の縮尺で描くのが一般的です。最近はパソコンを使ってCADやドローソフトで描くことも多くなってきました。実際に舞台に飾る背景もコンピュータで描かれるのならそれでよろしいのでしょうが、人の手によって描かれるものなら、細かい指定を含めて、やはり手描きに勝るものはないでしょう。
因みに小さく描かれた図案を実際の大きさに塗ったり描いたりする人のことを、関東では「絵描き」、関西では「絵屋」と呼んでいます。

大道具製作工程は、道具帳に基づいて「描き抜き」を作ることから始まります。実際に製作するに当たっての指示図面です。この時、運送の条件を考慮して、トラックに載りきるサイズに分けて製作する必要があります。

大工はこの「描き抜き」に基づいて、木材などで「骨地=枠」を作ります。
空枠の場合、その上に布地(生成の木綿地)を張り、水糊します。
ベニヤ張りの「キリダシ」などの場合、紙で「表具(関東では経師)」して下地を作ります。
ここで「絵屋」の出番です。大きな形だけ出来てまだ真っ白なところへ、道具帳を引き伸ばした形の「アタリ」をチョーク等で描きます。「塗り込み」はアタリ線に沿って、大刷毛や筋交い刷毛を使って地の色を塗り分けます。更に、「仕上げ」として細かいタッチを入れ、墨線や見込みや光線などの罫を入れて「書き割り」、更に絵の具や墨を薄く溶いた「シャブ」で影や汚しや板目などを入れて完成させます。

このように解説すると、随分多人数が関わっているように聞こえますが、大会社ならともかく、私共では一人が何役もこなします。
なお、より詳しくは、中田節著『大道具で楽しむ日本舞踊』(新典社選書50・2012年5月5日刊行)をご覧下さい。お近くの書店に無い場合、Amazonでもご購入頂けます。当サイトへお申し込み頂くことも可能です。

ここにお見せするのは、道具帳の一端です。ご参考までに。
但し、この中には著作権が興行主体に属しているものもあります。無断使用は絶対にしないで下さい。

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